Ko-Ya-Shi

日常に潤いを与えるライフスタイルブログ

20年ぶりの読書感想文

 COVID-19の感染者数の増加にともなって、東京をはじめ全国で外出自粛令が出ている。緊急事態宣言が出るのも時間の問題とも言われるも、なんとも煮えきれない状態が続いている。

 

そうしている間にも感染者数は加速的に増加している。刻々とアップデートされていく情報を集めながら、どのように時間を過ごしていくか、肉体的な健康だけで精神的にも健康に過ごしていくかが感染しないためには必要だ。

 

 在宅勤務の際に働きやすい環境を作るのと、気分転換も兼ねて、部屋の掃除をしていたところ、懐かしい資料が出てきた。

 

 かれこれ20年近く前に書いたと思われる文章の数々だ。ラップの歌詞や詩、小説、さまざまな創作物があり、甘酸っぱい記憶がよみがえる。当時読んでいた村上春樹の影響を強く受けた文体など、読んでいるこちら恥ずかしくなるような思いに駆られる。

 

 青春の1ページの寄せ集めのような作品群を見ていると、大学のレポートを発見した。「リング」「らせん」「ループ」というタイトルだ。今から20年近く前、大学の同級生から急にレポート形式の読書感想文をくれたことを思い出した。

 

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読書感想文にはしっかりと表紙も付けられていた

 

下記は友人が書いた読書感想文である。

 

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「リング」「らせん」「ループ」

 

 この3つの長編小説を読み終えたとき、いつもの「小説を読み終えた」という達成感を感じた。「リング」にしても「らせん」にしても「ループ」にしても全部350ページ程度あるのに6日間という早さで読み終えた。やはりこれはこれらの小説が面白かったということに尽きると思う。「リング」「らせん」は、ホラーというイメージがあったのに「ループ」ではホラーのホの字もなかった。

 

 「ループ」の中では、「リング」「らせん」の世界は『ループ』という仮想世界になっていたのには少々驚かされた。ということは、「ループ」に出てくる人たちもまた仮想世界の生物なんだということがわかると思う。

 

 それにしても、よくできているなと思う。あとがきで著書は「リング」を書き終えたとき「らせん」の内容が決まっていなかったと書いている。僕はこの3部作のつながり少しバック・トゥ・ザ・フューチャー1・2・3に似ているなと思った。過去の影響は未来に影響し、未来に起こっていることは過去に原因があるというような感じで。

 

 ところで、僕は先に「リング」の映画版を見ているので、本の内容と少し違う部分にがっくりきた。まったく同じ内容にすればいいのにと思った。映像で見ているせいもあって高山竜司は、頭の中でずーっと真田広之であった。そして、高野舞も中谷美紀だった。他の登場人物は全部頭の中で想像している人だ。もし映画を見ていなければこの2人も変わっていただろう。

 

 この3つの連続小説を読み終えたことで得たことが1つある。それは本がスゴいということだ。いや、言い方がいけなかったかもしれない。鈴木光司という人がスゴいのだ。どうやったら本の中であんなに恐い描写や、エッチな描写を書けるのが不思議でならない。

 

 後者のほうは他の作家でもっと優れている人がいるのかもしれないが、前者の方はまったくもって「本当に怖かった。」。読み終わった後、1人で眠れなかったのは事実だ。隣の部屋の友達には迷惑をかけた。その後もときどき恐怖がよみがえってきたこともあった。しかし、「リング」「らせん」「ループ」を全て読み終え、これらを1つの物語と考えると恐さが消え、なにかもっと違う、言葉で言い表せない感情が今、胸の中に残っている。また最初から読み始めると同じ感情が繰り返されるだろう。

 

 最後に、今回なぜかわからないがこういった感想文を書いてしまったのは、自分でも驚きに値する。宿題で出された感想文は一言も書けないのにこんなにすらすらと書けたのはこの本が神で僕に書けと命令を下したのかもしれない。

今、僕たちが生きている現実は、後の未来においては『ループ』という仮想世界かもしれない。

 

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 背伸びせずに素直に感想が書かれている。文章を書かない学生が思わず筆を取り、感じるままに感想を述べた。つたない表現力がかえって躍動感を持たせているように思えるほどだ。やはり本には人の心を動かす力があるのだと感じさせてくれる感想文だった。

 

 友人が感想文を書いた理由としては、私が3冊の小説を読み終えて、絶賛していたことが背景にあるのだが、レポートの形式でこの感想文をもらった時は非常に驚いた記憶がある。その時も嬉しかったが、今、読み返してみて、タイムカプセルのように色あせない感想文をくれた友人に感謝せずにはいられない。

 

 友人とは学生の時以来、連絡を取っていない。かれこれ20年近く経っているだろうか。このタイミングで読み返すということは、何かのメッセージなのかもしれない。もしかすると、これも仮想世界なのだろうか。

 

 

 それを確かめるために20年ぶりに旧友へ連絡してみることにする。

 

 

 (D)